サービスの休止・縮小を、利用者にどう説明するか──「基準を決める」の次にやること【訪問介護】

台風が近づいてくる。このまま訪問を続けるのは危ない。そう判断してサービスを縮小・休止する。訪問介護のBCP(業務継続計画)では、この「休止・縮小の基準」を定めておくことが求められます。

ただ、基準を決めただけで安心してはいけません。その基準が、利用者やご家族、そしてケアマネジャーに伝わっていなければ、いざというときに大きな混乱を招くからです。今回は、「基準を決める」の次にやるべきこと、つまり平時からの説明と共有について整理します。

「当日いきなり休止」が招くもの

もし、休止の基準を事業所の中だけで決めていて、利用者や家族に伝えていなかったらどうなるでしょうか。

台風の当日、いつも来るはずのヘルパーが来ない。利用者や家族は「なぜ来ないのか」「今日はどうすればいいのか」と不安になります。事業所には問い合わせの電話が殺到し、ただでさえ人手の限られる災害対応の初動で、その対応に追われることになります。

一方、家族が在宅で数日は対応できる利用者もいれば、訪問が止まると生活が立ち行かなくなる利用者もいます。どの利用者にどう備えてほしいのかを事前に伝えていなければ、家族も心の準備ができません。混乱の多くは、「知らされていなかった」ことから生まれます。

平時に、三者へ共有しておく

だからこそ、休止・縮小の基準は、決めたうえで平時から共有しておくことが大切です。共有する相手は、大きく三者です。

一つ目は、居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)です。訪問介護がどの基準でサービスを縮小・休止するのかをケアマネが把握していれば、休止時に他事業所の訪問サービスへ変更するといった代替の調整を、あらかじめ考えておけます。ケアマネは複数のサービスを束ねる立場ですから、ここへの共有はとりわけ重要です。

二つ目は、利用者ご本人。三つ目は、そのご家族です。「台風で◯◯警報が出た場合は、訪問を見合わせることがあります」「その際は、こう備えておいてください」ということを、平時のうちに、落ち着いて説明しておく。当日あわてて伝えるのとは、受け止められ方がまったく違います。

説明の際は、断定的に「休止します」と伝えるより、「甚大な被害が予想される場合は、サービスを休止・縮小させていただくおそれがあります」という状況により検討することを含んだ伝え方のほうが、実態に即しており、利用者・家族にも無用な不安を与えません。

共有の記録が、そのままBCP運用の証跡になる

ここが、今回いちばんお伝えしたいところです。

休止・縮小の基準をケアマネや利用者・家族に共有したとき、その事実を記録しておくことは、単なる事務作業ではありません。それ自体が、BCPを「運用している」ことの証跡になります。

行政の運営指導は、BCPを「作ったかどうか」を確認するフェーズから、「運用しているかどうか」を確認するフェーズへと移りつつあります。立派な計画書がファイルに綴じてあることより、その基準が現場やケアマネ、利用者に共有され、実際に動く状態になっているか。そこが問われるようになってきています。

たとえば、利用者・家族への説明を行った記録、ケアマネと基準を共有したやり取りの記録。こうした一つひとつが、「この事業所はBCPを絵に描いた餅にしていない」ことを示す材料になります。基準を決めることは出発点にすぎません。共有し、記録し、必要に応じて見直していく。その一連の流れが、平時の運用になるのです。

「作った」BCPを「運用している」BCPにするために

介護BCP教育研究所では、BCP文書のなかにある矛盾と空白を洗い出すBCP診断を行っています。休止・縮小の基準が共有を前提に設計されているか、運用の証跡として何を残せばよいか、といった在宅系ならではの視点でチェックします。詳しくは診断サービスのページをご覧ください。