各事業所の「休止基準」をケアマネが把握する重要性【居宅介護支援】

台風が近づいてくると、訪問介護や通所介護の各事業所は、それぞれの基準にしたがってサービスの休止・縮小を判断します。「◯◯警報が出たら送迎を見合わせる」「甚大な被害が予想される場合は訪問を休止する」といった基準です。

では、その基準を、複数のサービスを束ねる立場のケアマネジャーは把握しているでしょうか。もし把握していなかったら、どうなるか。担当する利用者のうち、どのサービスがいつ止まるのかが分からないまま台風の当日を迎えることになります。代替サービスの調整も、前倒しの段取りも、後手に回ってしまうのです。

これは、ケアマネがサービス提供のいわば「ハブ」であるからこそ生じる論点です。今回は、各事業所の休止基準を把握しておくことの意味と、その備え方を整理します。

ケアマネは「サービスを提供しない」から、見落とされやすい

訪問介護や通所介護の事業所は、自分たちの手でサービスを止める判断をします。だから、休止基準は当然、自分ごととして意識されます。

一方、居宅介護支援は、自らが入浴や食事の介助といったサービスを直接提供するわけではありません。そのぶん、「休止基準は各事業所が持っているもの」と受け止めてしまい、自分ごとになりにくい面があります。

けれど、実際は逆です。複数のサービスを束ねる立場だからこそ、各事業所がどの基準で止まるのかを一か所に集約しておく必要があります。利用者の生活は、複数のサービスの組み合わせで成り立っています。そのうちどれかが止まるとき、全体を見渡して調整できるのはケアマネだけなのです。

各事業所の休止基準を「事前に把握」しておく意味

この点について、国のガイドラインもはっきりと示しています。利用者が利用する各事業所が定める休止・縮小の基準について、ケアマネが事前に情報共有し、把握しておくこと──これが居宅介護支援に求められています。

ポイントは「事前に」という部分です。発災してから、あるいは台風が目前に迫ってから、「あの通所はいつ休むのか」「この訪問はどの警報で止まるのか」を一件ずつ確認していては、とても間に合いません。回線も混み合い、各事業所も自分たちの対応で手一杯です。

平時のうちに各事業所の基準を集めておくからこそ、先手が打てます。担当利用者が使っているサービスの休止基準を、あらかじめ手元に一覧でそろえておく。これがハブとしての備えの出発点になります。

把握しているからこそ打てる「前倒し」と「代替調整」

各事業所の休止基準が頭に入っていると、災害が予想される段階で具体的な手が打てます。

一つは、サービスの前倒しです。ある通所介護が「台風の当日は休止する」と分かっていれば、その前日までに入浴や必要な支援を前倒しできないか、事業所と相談できます。基準を知らなければ、この発想そのものが生まれません。

もう一つは、代替サービスの調整です。あるサービスが長期間の休止に入りそうな利用者について、他事業所の通所サービスや訪問サービスへの一時的な変更を、あらかじめ検討しておけます。ガイドラインも、サービス提供が長期間休止する場合には、必要に応じて他事業所への変更を検討するよう求めています。この段取りを平時から描いておけるかどうかは、各事業所の基準を把握しているかにかかっています。

休止基準を握っているケアマネが先回りして動くことが、利用者のサービスがぷつりと途切れる事態を防ぎます。

ケアマネ自身のサービスにも、休止基準がいる

ここまでは「各事業所の基準を集める」話でしたが、忘れてはならないことがあります。居宅介護支援という自サービスもまた、台風などで甚大な被害が予想される場合には、休止・縮小を余儀なくされることがある、ということです。

モニタリングや調整といったケアマネの業務も、災害時には平常どおりには回りません。ですから、自サービスについても休止・縮小の際の対応方法を定めておく必要があります。そして、その内容を他の居宅介護支援事業所やサービス事業所、地域の関係機関に共有し、利用者やその家族にも説明しておく。

つまりケアマネは、各事業所の基準を集める側であると同時に、自分の基準を関係先に共有する側でもあるのです。情報は、集めるだけでも、出すだけでも足りません。両方向でめぐらせてこそ、災害時の連携が成り立ちます。

「集約」と「共有」の往復が、ハブを機能させる

あらためて整理すると、ケアマネがやるべきことは二つの方向に分かれます。

一つは集約です。担当利用者が使う各事業所の休止基準を、一覧にして手元に持っておく。誰のどのサービスが、どの条件で止まるのかが一目で分かる状態にしておく。これが前倒しと代替調整の土台になります。

もう一つは共有です。自事業所の休止・縮小の対応方法を、関係する事業所や地域の関係機関、そして利用者・家族に伝えておく。

この集約と共有の往復こそが、ケアマネというハブを災害時に本当に機能させます。ふだんから複数の事業所と利用者をつないでいるケアマネだからこそ、その結節点に休止基準の情報を集め、めぐらせることができる。それが、担当利用者の生活を災害から守る、居宅介護支援ならではの備えになります。

担当利用者が使う各サービスの休止基準、そろっていますか

介護BCP教育研究所では、BCP文書のなかにある矛盾と空白を洗い出すBCP診断を行っています。各事業所の休止基準を把握・一覧化する仕組みが計画に組み込まれているか、自事業所の休止基準が関係先への共有を前提に書かれているか、といった居宅介護支援ならではの視点でチェックします。詳しくは診断サービスのページをご覧ください。