停電時の自動切替は必要か|ATSと非常用電源の確認事項

介護施設・事業所の非常用電源

停電時の自動切替は必要か|ATSと非常用電源の確認事項

非常用発電機や蓄電池があっても、停電時に自動で電源が切り替わるとは限りません。夜間の少人数体制で手動操作が必要な場合、担当者が設備室へ行くまで必要な機器が停止することになります。

本ページでは、ATSの役割、自動切替が必要な場面、発電機・蓄電池・UPSとの違い、既設設備とBCPで確認する項目を説明します。

最終確認:2026年9月15日
ATSの仕様、切替時間、接続できる電源・負荷、法令上の要件は設備ごとに異なります。既設設備への追加や変更は、電気工事会社、設備設計者、メーカー等へ確認してください。

ATSは電源の切替を行う装置

ATSはAutomatic Transfer Switchの略で、通常使用している商用電源と、発電機や蓄電池等の予備電源を切り替える装置です。ただし、ATSだけを設置すれば停電対策が自動化されるわけではありません。

設備・機能主な役割確認すること
停電検知商用電源の停電や電圧低下を検知何を停電と判断するか、検知までの時間
自動始動盤停電を検知して発電機へ始動信号を送る自動・手動の設定、始動失敗時の警報
発電機・蓄電池停電時に使用する電力を供給出力、運転時間、電圧・周波数の安定
ATS・電源切替盤商用電源から予備電源へ給電経路を切り替える切替時間、対象回路、容量、自動復帰
負荷制御必要な機器を順番に起動し過負荷を防ぐ起動順序、同時起動、停止する機器

「自動始動」と「自動切替」は同じではない

発電機が自動で始動しても、建物の回路が自動で切り替わらなければ機器へ給電されません。逆に、切替装置があっても発電機が始動できなければ電源は復旧しません。停電検知、始動、発電、切替、負荷投入を一連の仕組みとして確認する必要があります。

手動切替・ATS・UPSを比較する

自動切替があっても、発電機が始動して電圧が安定するまで短時間の停電が生じる場合があります。瞬断を許容できない機器は、UPS等を組み合わせて検討します。

方式停電時の動き向いている場面主な注意点
手動始動・手動切替職員等が発電機を始動し、切替操作を行う停止を一定時間許容でき、確実に操作できる担当者がいる夜間、少人数、担当者不在、設備室へ行けない状況
自動始動・ATS停電検知後に発電機を始動し、安定後に回路を切り替える職員の操作を待たずに建物の重要回路へ給電したい始動・切替までの停止時間、故障、対象外回路
蓄電池の自動切替機器の仕様に従い蓄電池側へ切り替える発電機より早い復旧や、騒音・排気を避けたい切替時間、出力、容量、全負荷・特定負荷の違い
UPS停電・瞬時電圧低下時も一定時間給電を継続通信・サーバー等、短い停止でも再起動やデータ消失が起こる機器給電時間、電池交換、接続機器、発電機との適合
UPSと発電機UPSが切替までを支え、その後は発電機から給電停電直後から長時間まで電源を切らさず維持したい両設備の容量、切替順序、電源品質、総合試験

UPSはUninterruptible Power Supplyの略で、無停電電源装置と呼ばれます。すべての介護・医療機器を接続できるとは限らないため、機器メーカーの使用条件を確認してください。

自動切替の必要性を五つの質問で判断する

判断する質問「はい」の場合検討する対策
数秒から数分の停止で利用者の安全に影響するか手動操作を待てない可能性があるUPS、自動切替、機器内蔵電池、代替手段
夜間に設備操作ができる職員が必ずいるか担当者と操作場所が確保されている手動手順の実行可能性と訓練を確認
停電中に設備室へ安全に移動できるか浸水、地震、火災、暗闇でも移動可能か確認が必要自動化、遠隔表示、別の操作場所
停電復旧後の戻し操作を確実に行えるか復電確認と切替手順を担当できる自動復帰の要否、誤操作防止、連絡手順
発電機の容量を超える機器が同時に起動しないか起動時の過負荷が起こる可能性がある負荷の優先制御、順次起動、対象回路の見直し

夜勤者一人で行えるかを基準にする

平日日中に設備担当者が操作できても、夜間・休日の停電で同じ対応ができるとは限りません。停電の検知から給電開始までを夜勤体制で再現し、手動で成立しない場合は自動切替や操作方法の見直しを検討します。

機器ごとに許容できる停止時間を確認する

施設全体を一律に自動切替するのではなく、停止時間の影響が大きい機器から確認します。下表は確認の入口であり、各機器の使用可否を保証するものではありません。

機器・設備停電時に起こること確認する内容
吸引器・酸素濃縮器等停止が利用者の健康・生命に直結する場合がある内蔵電池、許容停止時間、予備機、接続可能な電源
ナースコール呼出し、表示、通話が停止する場合がある主装置・端末の予備電源、復旧方法、手動代替
電話・ネット・サーバー短い停電でも再起動や通信断が起こるONU、ルーター、交換機、サーバーを含むUPS範囲
給水ポンプ上階への給水やトイレ使用に影響する三相・単相、起動電流、受水槽残量、手動給水
空調暑熱・寒冷環境が利用者へ影響する優先区画、起動電流、同時起動の回避、代替場所
厨房・冷蔵設備調理停止、食品・薬品の温度上昇が起こる再起動、必要時間、優先設備、別の食事提供方法
エレベーター停止位置や閉じ込め、垂直移動の制限が生じる停電時救出運転、発電機運転、保守会社との手順
消防・防災設備法令上の非常電源や作動条件が定められる場合がある設計図、設備区分、点検結果、所轄消防署等との協議

既設設備で確認する18項目

盤の外観だけでは、どの回路がどのように切り替わるか判断できません。単線結線図、設備仕様書、試験記録を用意し、保守会社または電気工事会社と確認します。

  1. 予備電源の種類
  2. 発電機の自動・手動設定
  3. ATS・切替盤の設置場所
  4. 切替対象の分電盤と回路
  5. 切替対象外の回路
  6. 停電検知から始動までの時間
  7. 始動から給電開始までの時間
  8. UPSで補う必要がある時間
  9. 復電時の自動・手動復帰
  10. 発電機停止までの運転手順
  11. 始動失敗・切替失敗の警報
  12. 警報を確認できる場所
  13. 発電機の出力と接続負荷
  14. モーター等の起動順序
  15. 手動切替の方法
  16. 操作できる担当者
  17. 直近の切替試験日と結果
  18. 図面・手順書・鍵の保管場所

自動モードが解除されていないか確認する

点検や工事後に手動モードのまま戻されていると、停電時に自動始動しません。日常点検では、燃料や始動用蓄電池だけでなく、制御盤のモードと警報表示を確認します。

発電機単体ではなく切替後の機器まで試験する

発電機が始動したことだけを確認しても、BCP上の試験にはなりません。実際に停電を想定し、重要回路への切替と機器の復旧まで確認します。実停電を伴う試験は、専門会社の計画と安全管理のもとで行ってください。

試験段階確認すること記録すること
事前確認停止できない機器、利用者への影響、代替手段、連絡先試験範囲、責任者、中止基準
停電検知制御盤が停電を正しく検知するか検知時刻、警報、職員への通知
始動・切替発電機が始動し対象回路へ切り替わるか始動時間、切替時間、異音・警報
負荷確認優先機器が動き、過負荷や電圧低下がないか稼働機器、停止機器、計測値
復電・復帰商用電源へ安全に戻り発電機が停止するか復帰時間、再起動が必要な機器
職員対応夜勤者が表示確認、連絡、代替対応を行えるか迷った操作、伝わらなかった情報、改善点

停電から給電開始までをBCPに記載する

BCPには「非常用発電機を使用する」だけでなく、自動で動く範囲と職員が行う範囲を分けて記載します。

  1. 停電を確認する場所と方法
  2. 自動始動・自動切替の対象設備
  3. 給電開始までの想定時間
  4. 切替までUPS等で維持する機器
  5. 自動切替されない回路
  6. 停止した機器の代替方法
  7. 警報・異常表示の確認者
  8. 始動・切替失敗時の手動操作
  9. 保守会社・電気工事会社への連絡
  10. 発電機容量を超えない使用順序
  11. 復電時に再起動する機器
  12. 定期試験と訓練の実施時期

自動化しても職員の対応は残る

ATSが正常に作動しても、給電対象外の機器、燃料残量、警報、復電後の再起動は職員が確認します。「何もしなくてよい」とせず、自動で行われる動作と職員が確認する動作を手順書に分けてください。

出典・掲載・広告について

本ページは、2026年9月15日に確認したメーカー等の公式情報をもとに作成しています。製品ごとに始動・切替時間、対象電源、接続条件、保守方法が異なるため、個別設備の仕様書を優先してください。

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