既設の非常用電源で何を何時間動かせるか|介護施設の確認方法

介護施設の既設非常用電源

既設の非常用電源で
何を何時間動かせるか

非常用発電機や蓄電池が設置されていても、停電時に施設内のすべての機器へ給電できるとは限りません。設備の出力だけでなく、非常用回路につながっている機器、起動時に必要な電力、燃料や蓄電池の容量、切替方法を確認する必要があります。

既設設備で継続できる業務と運転時間を確認し、不足がある場合に点検、回路改修、更新、増強のどれが必要かを判断する方法を解説します。

最終確認:2026年9月14日
掲載する計算は概算です。施設の電気設備や医療機器への接続可否は、電気工事会社、設備管理会社、機器メーカーにご確認ください。

出力・回路・運転時間を分けて確認する

既設の非常用電源を確認するときは、次の三つを分けて確認します。一つでも確認できなければ、「設備があるから停電時も使える」とは判断できません。

確認すること分かること主な確認資料
出力同時に動かせる機器の範囲発電機・蓄電池の銘板、仕様書、負荷試験結果
給電回路停電時に実際に電気が届く場所と機器単線結線図、非常用分電盤の回路表、非常用コンセント表示
運転時間給電を継続できる時間燃料タンク容量、燃料消費量、蓄電池容量、実際の使用負荷

消防設備用の非常電源とBCP用電源は別に確認する

消防設備の作動を目的とする非常電源があっても、居室の空調、厨房、給水ポンプ、通信機器などへ給電されるとは限りません。設備の名称だけで判断せず、停電時にどの回路へ切り替わるかを図面と実地で確認してください。

担当者が集める資料

銘板は発電機や機器本体に付いた型式・出力の表示、単線結線図は建物内の電気の流れを示す図面、非常用分電盤は停電時に給電される回路をまとめた盤です。担当者は数値を判断するのではなく、これらの資料と「止められない業務」をそろえて設備会社へ確認を依頼します。

停電時に使いたい機器と給電先の確認表

最初に、停電時に継続する業務から必要な機器を挙げます。消費電力は一般的な目安を転記するなどはせず、施設で使用している機器の銘板、取扱説明書、メーカー仕様書で確認します。

業務・機器台数定格消費電力起動電力非常用回路使用時間優先度
記入例:給水ポンプ施設で確認銘板で確認メーカーに確認図面・分電盤で確認運用計画で決定高・中・低
照明
ナースコール・見守り機器
通信・情報機器
冷蔵・厨房機器
空調・暖房機器
吸引器など個別に必要な機器

医療機器や生命維持に関係する機器は、電源品質、接地、切替時の瞬断、接続方法を機器メーカーや医療職へ確認してください。ポータブル電源や延長コードへ独自に接続しないでください。

確認した機器を二つに分ける

表を埋めたら、「既設の非常用回路で給電できる機器」と「必要だが給電できない機器」に分けます。後者は、発電機の容量を増やすだけでは使えるようになりませんので、分電盤、切替盤、配線、接続口の改修が必要かを確認します。

非常用発電機で動かせる機器と時間の確認方法

同時に使う機器の出力を確認する

発電機の銘板にある定格出力と、非常用回路で同時に使用する機器の負荷を確認します。発電機ではkVA、機器ではkWやWが使われることがあるため、単位をそろえずに比較しないように注意します。力率を含む換算は発電機の仕様書と専門業者の計算で確認してください。

モーターやコンプレッサーを使うポンプ、冷蔵機器、空調機器などは、運転中より起動時に大きな電力が必要になる場合があります。メーカーが示す起動電力と、複数機器が起動する順序を確認します。ヤマハ発動機とHondaの発電機選定案内でも、消費電力だけでなく起動電力を確認するよう示されています。

燃料で何時間運転できるかを確認する

概算運転時間 = 使用可能な燃料量 ÷ 使用負荷時の燃料消費量燃料消費量は負荷率によって変わります。定格負荷時の値だけで計算せず、想定負荷に対応するメーカー資料を使用します。

タンクの総容量と実際に使用できる燃料量は同じとは限りません。現在の残量、劣化、定期補給の方法、災害時に燃料を調達できない期間も確認します。試運転だけで燃料を消費することも運用計画に含めます。

無負荷運転だけでは実際の供給能力を確認できない

エンジンが始動することと、施設の必要負荷へ安定して給電できることは別です。設備の状態や法令上の点検内容に応じて、負荷運転、内部観察、保全策などの実施状況を確認してください。

参考:ヤマハ発動機「発電機の選び方」、Honda「発電機選びのポイント」、デンヨー「ディーゼルエンジン発電機」。

蓄電池・ポータブル電源で動かせる時間の確認方法

蓄電池では、同時に供給できる「出力W」と、蓄えられる電力量を示す「容量Wh・kWh」を分けて確認します。容量が大きくても、接続する機器の合計出力や起動電力が製品の定格出力を超えると使用できません。

概算使用時間 = 使用可能容量(Wh) ÷ 機器の平均消費電力(W)実際には変換ロス、待機電力、温度、電池の劣化、機器の運転変動があるため、製品仕様に示された使用可能容量や計算条件を優先します。

計算例

容量2,000Whのポータブル電源について、メーカー案内と同様に使用可能分を80%と仮定し、平均消費電力200Wの機器だけを使う場合は、2,000Wh×0.8÷200W=約8時間が概算です。80%は一律の性能値ではありません。施設が保有する製品の仕様、電池残量、劣化状態を確認してください。

冷蔵庫や空調機器のように消費電力が変動する機器は、銘板の最大値だけでも、短時間の実測値だけでも正確な運転時間を出せません。一定期間の電力量を測定し、起動電力と合わせて確認します。

参考:EcoFlow「ポータブル電源の持ち時間の計算方法」。同社は概算式として「容量×0.8÷消費電力」を示しています。

確認結果を五つに分ける

確認後は、単に「容量不足」とまとめず、不足の原因を次の五つに分けます。必要な対策と相談先が変わります。

確認結果主な状態検討する対策
給電先の不足必要な機器が非常用回路につながっていない回路調査、切替盤・分電盤・配線の改修
出力の不足同時負荷や起動電力が発電機・蓄電池の出力を超える使用機器の優先順位、起動順序、電源の増強
運転時間の不足燃料または蓄電池容量が必要時間に足りない燃料タンク、補給契約、蓄電池、補完電源の追加
設備状態の不足老朽化、故障、電池劣化、負荷試験未実施点検、負荷試験、修理、更新
運用の不足手動切替、始動手順、燃料補給、接続方法が職員に共有されていない手順書、担当者、停電訓練、保守会社との連絡体制

優先業務から不足分を決める

施設全体を通常どおり動かす計算ではなく、停電中に継続する業務を優先度順に並べます。人命と安全確保に必要な負荷、生活維持に必要な負荷、復旧後でもよい負荷に分けると、追加する電源容量と回路の範囲を絞れます。

設備会社へ現状調査を依頼するときの確認項目

現状調査を依頼するときは、「非常用電源を見てほしい」だけでなく、調査範囲と成果物をそろえて複数社へ伝えます。

  1. 発電機・蓄電池の型式、製造年、定格出力
  2. 燃料種別、タンク容量、現在の残量
  3. 非常用分電盤と給電回路
  4. 自動・手動切替の別と瞬断時間
  5. 停電時に使用する機器の実負荷
  6. モーター等の起動電力と起動順序
  7. 想定負荷時の連続運転時間
  8. 点検履歴、故障履歴、負荷試験結果
  9. 不足する出力・電力量・回路
  10. 修理、回路改修、更新、増強の見積内訳

調査結果として受け取りたいもの

設備一覧、給電先が分かる図面、負荷一覧、想定運転時間、問題点、対策案、概算費用を文書で受け取ります。既設設備で足りる部分と不足する部分を分けてもらうと、不要な全面更新を避け、複数社の提案を同じ条件で比較できます。

既設非常用電源の調査・改修に対応する企業の方へ

介護・福祉施設における既設発電機や蓄電池の設備診断、給電回路調査、実負荷測定、負荷試験、回路改修、修理、更新・増強に対応する企業の情報を受け付けています。対応地域、調査内容、費用の目安、施設での実績をご提供ください。

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