介護施設の非常用電源容量の計算方法|必要な機器から考える

介護施設の非常用電源選定

介護施設の非常用電源容量の計算方法

非常用電源は、製品の容量から選ぶのではなく、停電時に継続する業務と使用する機器から必要出力と必要電力量を計算します。

このページでは、既設の発電機や蓄電池で賄える負荷を先に確認し、不足する出力と電力量だけを追加設備の条件としてまとめています。

最終確認:2026年9月14日
計算例は考え方を示すための仮定です。実際の設備容量、回路、力率、起動電力、電源品質は、電気工事会社、設備設計会社、機器メーカーにご確認ください。

出力W・発電機容量VA・電力量Whを混同しない

非常用電源の仕様には似た単位が並びますが、示している内容は異なります。

単位示すもの選定時の使い方
W・kW機器がその時点で消費する有効電力同時に使用する機器の定常負荷と起動電力を確認
VA・kVA発電機などが供給する皮相電力機器の力率を含めて必要な発電機容量を確認
Wh・kWh一定時間に使用する電力量蓄電池容量や、機器を何時間動かせるかを確認

容量が大きくても出力が足りなければ動かない

10kWhの蓄電池でも定格出力が2kWなら、同時負荷や起動電力が2kWを超える機器構成には対応できません。反対に、出力が足りても蓄電容量や燃料が少なければ必要時間を維持できません。

担当者が計算前に決めること

施設の担当者が発電機容量を確定する必要はありません。停電時に続ける業務、使う機器と台数、同時使用、必要時間、既設電源で給電できる範囲を決めます。その情報をもとに、力率や起動電力を含む最終容量を設備会社に計算してもらいます。

停電時に使用する機器を優先業務から選ぶ

通常時に使う機器をすべて書くのではなく、停電時にも継続する業務を決め、その業務に必要な機器だけを一覧にします。銘板や仕様書で数値を確認し、次の表を埋めます。

業務・機器台数定格W起動W同時使用1日使用時間必要日数既設給電
安全確認・照明
ナースコール・見守り
通信・情報機器
給水・排水
冷蔵・厨房
空調・暖房
利用者ごとに必要な機器

家庭用機器の一般的な消費電力を転記するのではなく、施設にある機器の型式ごとに確認します。モーター、コンプレッサー、ヒーターを含む機器は、定格消費電力とは別に起動電力を確認してください。

必要出力は同時負荷と最大の起動電力から計算する

必要出力は、同時に使う機器の定格Wを足すだけでは決まりません。機器の起動時に、ほかの機器がどの程度動いているかを含めてください。

必要出力の概算 = 起動中の機器の起動電力 + その時点で動いている他機器の定格消費電力複数のモーターが同時起動する場合は、その起動順序と合計を確認します。

例えば、通常運転中の機器が合計600Wあり、そこへ起動時2,000Wのポンプを動かすなら、概算では2,600W以上の出力が必要です。ただし、配線による電圧降下や将来の追加負荷もあるため、算出値と同じ出力の製品をそのまま選ばないでください。

ヤマハ発動機は、機器によって表示消費電力の3~4倍の起動電力が必要になる場合があると案内しています。Hondaも、複数機器を接続する場合は起動電力を確認し、余裕を持った出力を選ぶよう示しています。

発電機のkVAは専門業者が力率を含めて選定する

機器側のWと発電機側のVA・kVAは、そのまま同じ数値として扱えません。力率、単相・三相、電圧、周波数、モーターの始動方式を確認し、設備会社に必要発電機容量を算定してもらいます。

参考:ヤマハ発動機「発電機の選び方」、Honda「発電機選びのポイント」。

必要電力量は機器ごとのW×時間で計算する

必要電力量(Wh)= 消費電力(W)× 使用時間(h)× 台数複数の機器を使う場合は、機器ごとの電力量を計算して合計します。

100Wの機器を10時間使うと、必要電力量は1,000Whです。1日合計を算出した後、停電を想定する日数を掛けます。24時間連続で動く機器と、必要時だけ動かす機器を分けると過大な計算を避けられます。

蓄電池は変換ロスと使用可能容量を確認する

蓄電池の表示容量をすべて利用できるとは限りません。AC出力時の変換ロス、放電下限、待機電力、温度、経年劣化を含めて、メーカーが示す使用可能容量やバックアップ時間を確認します。

ポータブル電源メーカーのJackeryは、概算式として「バッテリー容量Wh×80%÷接続機器の消費電力W」を示しています。ただし、80%は全製品に共通する保証値ではありません。製品ごとの仕様と使用条件を優先してください。

参考:Jackery「ポータブル電源で家電を使える時間」。

既設設備で賄える分と不足分を分ける

追加設備を検討する前に、既設発電機・蓄電池の出力、給電回路、運転時間を確認します。設備があっても必要な回路につながっていなければ、容量ではなく回路の不足です。

計算項目必要量既設で賄える量不足分主な対策
同時使用時の出力算定した最大W・kVA既設設備の信頼できる出力必要出力-既設出力使用順序の変更、出力増強
必要電力量合計Wh・kWh既設蓄電池の使用可能容量必要電力量-既設使用可能容量蓄電池や充電手段の追加
運転時間BCPで定めた時間実負荷時の燃料・電池持続時間必要時間-既設運転時間燃料、タンク、補完電源の追加
給電回路使用する機器の接続先既設非常用回路給電されない機器・場所切替盤、分電盤、配線の改修

既設設備の確認手順は、既設の非常用電源で何を何時間動かせるかで確認できます。

仮定条件による不足容量の計算例

以下は計算方法を示す架空の例です。実際の機器容量の目安ではありません。

機器定格消費電力1日使用時間1日の電力量起動時の確認
通信機器150W24時間3,600Wh150W
必要箇所の照明200W12時間2,400Wh200W
業務用端末2台合計130W8時間1,040Wh130W
個別対応機器120W4時間480Wh120W
給水ポンプ750W2時間1,500Wh仮定2,500W
合計定常時最大1,350W―9,020Whポンプ起動時最大約3,100W

ほかの機器が600Wで運転中にポンプが2,500Wで起動する前提では、必要出力は約3,100Wです。1日に必要な電力量は9,020Whとなります。

既設蓄電池の使用可能容量が4,000Wh、定格出力が2,000Wと確認できた場合、電力量は少なくとも5,020Wh不足し、出力もポンプ起動時に約1,100W不足します。容量だけを追加しても、出力が3,100W未満ならこの条件を満たしません。

計算例の数値をそのまま見積もりに使わない

実際には、機器の運転率、起動順序、変換効率、電池劣化、配線、力率、電圧降下などを確認します。最終容量は、施設の実測値と図面をもとに専門業者に設計してもらってください。

容量計算を見積もり条件にする

複数社の提案を比較できるよう、同じ負荷一覧と運用条件を渡します。機器本体の容量だけでなく、次の条件を見積書と提案書に記載してもらいます。

  1. 停電時に給電する機器と回路
  2. 定常負荷と最大起動負荷
  3. 必要出力W・kW・VA・kVA
  4. 必要電力量Wh・kWh
  5. 想定する連続運転時間
  6. 既設設備で賄える範囲
  7. 追加設備で補う不足分
  8. 燃料消費量と必要備蓄量
  9. 蓄電池の使用可能容量と劣化条件
  10. 切替方法と停電から給電までの時間
  11. 工事範囲と既設設備の改修内容
  12. 試運転、負荷確認、保守条件

機器の優先順位を変えた複数案を受け取る

すべての負荷を賄う案だけでなく、最優先機器のみ、生活維持機器まで、施設全体という複数案に分けると、費用と継続できる業務を比較できます。初期費用だけでなく、燃料、点検、電池交換を含む維持費も確認してください。

非常用電源の容量計算・設計に対応する企業の方へ

介護・福祉施設の負荷調査、実測、容量計算、発電機・蓄電池の設計、回路改修、施工に対応する企業の情報を受け付けています。対応地域、調査範囲、提案書の内容、費用の目安、施設での実績のご提供をお願いします。

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