全員は同時に確認できない。ケアマネのための安否確認の優先順位のつけ方【居宅介護支援】

災害が起きたとき、居宅介護支援事業所がまず動くのが、担当利用者の安否確認です。誰もが真っ先に「あの人は大丈夫だろうか」と気にかけるでしょう。

けれど、少し立ち止まって考えてみてください。ひとりのケアマネジャーが担当する利用者は、数十人にのぼります。その全員に、同時に連絡を取ることはできません。

電話回線は混み合い、道路も寸断されているかもしれない。限られた時間と手段のなかで、順番に確認していくしかないのです。

だとすれば、「誰から確認するか」を決めていないと、何が起きるでしょうか。手当たり次第に連絡した結果、もっとも支援を必要としている利用者が、いちばん後回しになってしまう。これは十分に起こり得ることです。今回は、ケアマネにとって避けて通れない「安否確認の優先順位」について整理します。

なぜ「優先順位」が、ケアマネにとって特に重い論点なのか

優先順位づけは、どのサービス種別でも必要になります。ただ、居宅介護支援では、その重みが一段と大きくなります。

訪問介護や通所介護であれば、確認すべき利用者はおおむね自事業所がサービスを提供している人に絞られ、職員が手分けをしながら、また、その中でも直近のサービスに関連した人から優先的に連絡をされることもあるでしょう。

一方、ケアマネはそれぞれのケアマネが単独で担当することが多く、しかも一人ひとりの状態像も家庭背景もさまざまです。医療的なケアが欠かせない方もいれば、比較的お元気で家族の支援も厚い方もいる。この幅広さのなかで全員を平等に、同時に、というのは現実的ではありません。

だからこそ、ケアマネにとって優先順位づけは「できればやっておきたいこと」ではなく、災害対応の設計そのものに関わる、避けて通れない重要な検討事項なのです。

ガイドラインが、居宅介護支援に固有で求めていること

この優先順位づけは、心構えの問題にとどまりません。国のガイドラインは、居宅介護支援サービスに固有の事項として、次のことを求めています。

災害発生時に優先的に安否確認が必要な利用者について、あらかじめ検討したうえで、利用者台帳等において、その情報が分かるようにしておくこと。

これは訪問系や通所系にはない、居宅介護支援ならではの記載です。

ここには二つの動作が含まれています。一つは「あらかじめ検討する」こと。もう一つは「台帳で分かるようにしておく」こと。つまり、頭の中で優先度を思い描いているだけでは足りず、持っている利用者情報に優先度のいわば“タグ”をつけておくところまでが求められている、ということです。情報を持っているケアマネだからこそできる備えであり、ここが備えの核心になります。

優先順位づけの視点

では、どの利用者を優先すべきか。基本の軸は、「サービスや支援が途切れたときに、生命・健康への影響が大きい人から」です。この軸に沿って、いくつかの視点で見ていきます。

一つ目は、医療的なケアへの依存度です。たとえば、たんの吸引や在宅酸素、インスリン管理など、支援が滞ると生命に直結しかねない利用者は、安否確認の緊急度が高くなります。

二つ目は、身近な支えの有無です。独居で近くに頼れる家族がいない利用者は、被災時に孤立しやすく、優先度が上がります。逆に、同居家族がいて数日は対応できる場合は、緊急度をやや下げて考えられることもあります。

三つ目は、自力での避難の可否です。寝たきりや重度の認知症などで、自分では避難行動をとれない利用者は、早期の状況把握が欠かせません。

ただし、これらを機械的な点数で線引きするのはおすすめしません。同じ「独居」でも、ご近所との関係が濃い方とそうでない方では事情が違います。あくまで複数の視点を総合的に見て、その利用者の実像に即して優先度を判断する。この姿勢が大切です。

「分かるようにしておく」とは、実務でどうすることか

優先度を検討したら、それを「引き出せる状態」にしておく必要があります。発災時、混乱のなかで一人ひとりの事情を思い出している余裕はありません。誰が見ても、どの利用者を優先すべきかが一目で分かる状態にしておくことが肝心です。

具体的には、利用者台帳やフェイスシートに、災害時の優先度が分かる印をつけておくこと。あわせて、緊急連絡先は固定電話・携帯電話・メールなど複数の連絡先と手段を控えておくと、一つの回線が使えなくても連絡の道が残ります。

もう一つ、忘れられがちですが有効なのが、おくすり手帳の持参指導です。避難先でも服薬情報が参照できるよう、平時から利用者に声をかけておく。これも「情報を引き出せる状態にしておく」備えの一つです。

優先順位は、一度決めて終わりではない

最後に大切なことをお伝えします。安否確認の優先順位は、一度決めたら固定、というものではありません。

利用者の状態は、時間とともに変わっていきます。退院した直後、要介護度が上がったとき、同居家族が転居して独居になったとき。そのたびに、優先度は動きます。昨年つけた優先度が、今年の状況に合っているとは限らないのです。

だからこそ、モニタリングのたびに優先度を見直し、台帳に反映していく。この繰り返しが、優先順位づけを“生きた情報”に保ちます。そして、こうして整えた情報は、いざ発災したときに「誰と連絡が取れて、誰がまだ未確認なのか」を一覧で把握する土台になります。優先度が整理され、安否確認の結果を一覧で管理できる状態にしておくこと。それが、担当利用者の多いケアマネの初動を支える、いちばんの備えになります。

自事業所の利用者台帳を、災害の視点で見直しませんか

介護BCP教育研究所では、BCP文書のなかにある矛盾と空白を洗い出すBCP診断を行っています。利用者台帳に災害時の優先度が反映されているか、優先順位づけの視点が計画に組み込まれているか、といった居宅介護支援ならではの視点でチェックします。詳しくは診断サービスのページをご覧ください。